小笠原諸島の西之島の噴火で新たな島が確認されてから、20日で10年になる。朝日新聞社機「あすか」からの3日の取材では、中央の火口や斜面から白い噴気が上がり、周辺海域は茶色や緑色に変色して火山活動が続いていることがうかがえた。
よく見ると、白いまだら模様で染まった台地が確認できた。この地で繁殖してきた海鳥が残したフンの跡だ。この日は台地の上で過ごしたり、上空を飛んだりするアオツラカツオドリ5羽とカツオドリ2羽を確認した。
噴火前は国内有数の海鳥の繁殖地だったが、島を覆った溶岩によって生態系がリセットされた。その後の推移にも注目が集まる。
これまでの国の調査などでは5種の海鳥の繁殖が確認された。植物の種や昆虫が海鳥に付着して持ち込まれて広がっていくことが予想されている。
ただ、今年になって海鳥の数が減少しているという。
「海鳥がすごく少なくなっている。今後、島の生態系がどうなっていくのかまったく予想がつかない」。噴火後の西之島を調査してきた川上和人・森林総合研究所鳥獣生態研究室長(鳥類学)はそう話す。
噴火後初めての上陸調査は16年10月。研究者らによって、火山活動が落ち着いた島でカツオドリとアオツラカツオドリの繁殖が確認された。
また、川上さんらの研究チームなどによるこれまでの調査では、カツオドリとアジサシの仲間の5種の繁殖を確認。トビカツオブシムシといった昆虫も見られている。ワモンゴキブリの繁殖が見つかり話題にもなったこともある。
ところが19年12月、再び噴火活動が活発になり、翌20年に大量の火山灰が島全体を覆った。
「このまま海鳥もいなくなるのではないか」という研究者らの予想に反し、21年も数千羽の海鳥が繁殖のために飛来した。だが、巣の近くで多数の放棄された卵が見つかった。噴火の影響で地形が変わり、繁殖成功率が大きく下がっていたという。
生態系は今、分岐点にあると…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル